東京高等裁判所 昭和36年(ネ)1433号 判決
一、弁護士はその委任を受けた訴訟事件につき委任者の正当な権利を擁護するため法律の専門家として善良な管理者の注意を用い誠実に職務を行なう義務を負うものであるから、特約その他別段の事由がない限り自己の受任した事件につき敗訴の判決の送達を受けたときは、上訴についての特別の授権があると否とを問わず職務上の注意を以て判決理由を検討し適宣の措置を執るべく、その判決に明らかな判断の遺脱があり上訴を相当とするものについては、上訴の特別の授権を受けたときは上訴の手続を執り、上訴の委任がないため原審限りで委任が終了すべき場合には委任者に判決理由検討の結果を知らせて本人が権利擁護に必要な措置を執る機会を失わせないようにするのが通常の弁護士職務執行の態度と考えられる。
二、民事訴訟法第四百二十条第一項但書によれば、当事者が判決確定前に再審の事由あることを知つたときは、これを主張するには上訴の方法によらなければならないのであり、これを怠り判決を確定させたときはもはや再審の訴を提起することはできない。右にいう当事者が再審の事由あることを知つたときとは、当事者に訴訟代理人があるときは訴訟代理人がこれを知つた場合をも包含するものと解するを相当とするから、控訴人において上訴により再審事由を主張することをせず前訴判決を確定させた本件においては、右事由によつて再審の訴を提起することができない。
(川喜多 小沢 中田)